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HUB KYOTOの改装工事 by 山下麻子

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$GENETO-hub kyoto

GENETOとして、とても意義あるプロジェクトに関わらせてもらいました。
とてもとても古い建物で、ここがHUB KYOTOとして利用されることになり、GENETOが空間設計に少し関わらせてもらった次第です。
ちなみにHUBとは、世界38カ国で展開されている起業家の世界的コミュニティです。
HUB KYOTOとして使われるこの建物は、もともと京都家庭女学院として利用されており、今でも当時の机や椅子など、学校として利用されていた片鱗を伺い知ることが出来る建物です。
文化の重要性を元に作られた学校なので、教室の隣には能舞台や茶室が備えられています。
昨年の10月頃にも一期工事としてGENETOが関わらせてもらいました。
一期工事ではキッチン・浴室・トイレ等となる空間をメインに行いましたが、今回の二期工事では教室や能舞台の改修工事+照明やエアコンなど電気工事からなります。
ここまで古く、大きな建築の改修工事に関わる経験は非常に勉強になると同時に、職人さんの技の凄さに感動する日々でした。

まず行ったのは、教室と能舞台を間仕切る敷居部分の改修です。
木が腐り、且つ虫に食われていたためぼろぼろになっていました。
頭ではここからここを切り取って新たに付け替える、という風にイメージは出来るのですが、実際どのように手を動かすのかは私も見て初めて知ると言った具合です。


$GENETO-hub kyoto

既存の敷居を撤去し、そこにぴったりと納まるように新たに敷居をはめ込んでいきます。
撤去するといっても機械で切るようにスライスして既存の敷居を撤去するのではなく、ノミなどを用いてえぐっていきます。
そこを高さが水平になるように調整して新しい敷居をはめ込んでいくのですが、まるでパズルピースかのようにぴったりと納まっていきます。


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そこを次に塗装屋さんが既存の色と合うように、新たに塗装していきます。
古くなった独特の風合いのある色合いになるように、絶妙に塗料を配合して一気に塗り上げていきます。いくら敷居を正確に納めることが出来ても、塗装が微妙だと一気にみっともない状態になってしまいますが、この見事な連携はさすがでした。


$GENETO-hub kyoto

次に朽ちかけていた漆喰壁の塗り直し。
建物の歪みで大きくひび割れていた箇所の漆喰を一旦はがし、中の構造(小舞)をむき出しにします。漆喰の上から漆喰を塗り重ねることは出来ないので、大きなひび割れ箇所はまずこの作業が必要。むき出しになった小舞の上に中塗りを施して表面をフラットに仕上げていきます。


$GENETO-hub kyoto

中塗りを一晩乾燥させて、次は下塗り。既存漆喰と中塗り部分を馴染ませていきます。
この時点ですでに結構な新品感なのですが、これもまだ下塗り。
この上からようやく仕上げの漆喰を塗り、何度も小手で押さえることによって完全なるフラット表面に仕上がります。


$GENETO-hub kyoto

建築技術が発達しているとは言え、こういった左官技術は昔から変わらず引き継がれていることが多く、この建物が建てられた当時の職人さんも同じ作業でこの空間を仕上げていったのかと思うと、この場所を再生させるのに際して、職人さんの技術の普遍性を感じずにいられません。


$GENETO-hub kyoto

そして電気工事も大変です。
増築を繰り返された建物なので、場所によって非常に入り組んでおり、屋根に上ってどこからどう配線できるのかを検討。
今回の電気工事で求められたのはエアコン設備を整えるだけでなく、HUBエリアとそれ以外との電気回線を切り分けることでした。
この切り分け工事が最も難しく、職人さんの頭を悩ませていました。既存の電気配線は非常にややこしい状態になっており、当然器具も古いので漏電が起きないように注意を払いながらの作業。


$GENETO-hub kyoto

こういう場所だってよじ上る訳です。
室内においても、新築ではないので配線を壁の中に隠してしまうことが出来ないため、どうしても配線がむき出しになってしまいます。なので極力目立たないように柱の脇を走らせたり、梁の上を走らせたり。
今回の工事も一期工事と同様、いわば基礎工事的な役割です。内部でどのような家具が使われ、レイアウトされるのかといったビジュアル的にも映える部分はまだこれから先の話になるので、工事前と後でさほど大きな変化を感じないかもしれません。しかし、快適に人が空間を使うことが出来るように、見えない所で本当にたくさんの工夫と技と配慮が合わさって今回の工事は成り立っています。空間のベースとなる部分の重要性を感じながら関わることが出来たように思います。
また、ここは建物自体に既にパワーがあり、個性も強いので、今後何か新しいことをするには非常にデリケートに扱わないといけないと思います。だからといって敢えて何も施さないという選択肢は違うと思いますし、そうすることはこの建物のポテンシャルを封じ込めたままにするのでしょう。
昔ここが女学院として使われていた当時の活気が、現代にも蘇るような使われ方になることを期待します。

山下麻子


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$GENETO-山本晃久

GENETOが参画している京都のアートイベント” AS2 (アートを肴に酒を飲む)”では7月20日に#15 AS2 Summer 山本晃久 魔鏡展を開催します。
会場はGENETOがリノベーションに関わったHUB KYOTOです。
京都らしい空間と、京都の職人でしか作れない魔鏡を是非とも御堪能ください。

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