TANADAピースギャラリー2012の企画展”春夏秋冬”を締めくくる”冬”は、インスタレーションアーティスト吉本直子氏による”炉心溶融”というテーマの作品展です。
福島原発の建屋で作業をしている作業員の防護服に吉本氏が刺繍を施した作品です。
空気を包むかのように人ガタが空間に佇んでいます。
人ガタは真っすぐTANADAピースギャラリーの前にある小学校のグランドを見つめています。
錯綜する様々な人々の心理が伝わってきます。
吉本氏曰く「防護服の人達がTANADAの内部で会話している」と言われていましたが、来場者それぞれが会話をする人ガタを感じるのではないでしょうか。
一見グロテスクな表現となっている防護服に施された刺繍は、赤い丸が血を流しています。
まるで日本の国民が、それぞれに血を流している様にも感じさせられます。
TANADAピースギャラリーの白い空間に防護服の素材が溶けている様にも見え、空間を実に広く、美しく調和された構成になっています。
流石はインスタレーションアーティストだと感心させられます。
表現が作品その物だけではなく、全体でTANADAピースギャラリーに新たな空気感を作り出していると言う方が的を得ているかもしれません。
レセプションパーティーでは恒例となっているオーナー大植初代夫人と、そのお仲間によるパーティーフードが振る舞われました。
今回は吉本氏本人よりおでんの差し入れや、お客様より柿の葉寿司が振る舞われたりと、いつも以上に充実したパーティーフードでした。
素晴らしいアート作品を見ながら美味しいお料理を頂けるTANADAピースギャラリーは、最高に幸せな空間と時間を満喫できます。
レセプションパーティーではトークショーも開催されました。
今回は吉本直子氏と清水忠氏（清水忠企画室）によるものです。
二人とも非常にロジカルな方なので、話も非常に分かり易く興味深い内容へと進みます。
作品について、清水氏の話が終わると来客を巻き込んで作品について議論する形式となりました。
議論では作品と空間について、多くの批評が飛び交いました。
吉本氏の作品展では空間と作品の調和が如何に取れていたかが分かります。
TANADAピースギャラリーにとって多くの時間を割いて来た企画展2012は今回で終了です。
色々な思い出があるだけに感無量です。
レセプションパーティーでは多くの方々とお話しし、有意義な時間を持つことができました。
今回の作品展を通して感じるのは、アート作品には時代に対して批評性を持たせる事は、難解ではあるものの重要な事であると感じた事です。
つまり、2012年の我々が何に対して問題を持ち向き合っているのかが、抽象的な表現で言い表しているからです。
抽象性を持たせる事は、見る人それぞれにある程度の解釈の幅を持たせることができます。
特に、今回の様なテーマは非常にデリケートなものです。
ある意味、非常に時代のアイコンとなる3.11関連を扱うテーマは、少なからずそれぞれの表現に結びつけたいアーティストは多いはずです。
それだけに自己の意思を押し付けがちになったり、無勉強なままこの難しい内容を扱う作品等も少なくは無いはずです。
そんな中、吉本直子氏の作品は非常にリアルな体験とコンセプチャルな上に成り立っていると理解しました。
レセプションパーティー中、トークショーのゲストで来られた清水忠氏（右）、毎回作品展に来てくださる染織家 樽家紀治氏（左）と僕の3人で記念撮影をすることに。
学生時代はなかなか近寄り辛かったお二人だったので、こうして一緒に撮影する機会に恵まれて光栄な思いです。
これからも京都の名物男として、良き先輩として元気で活躍して頂きたいです。
吉本直子作品展”炉心溶融”は15日までとなっております。
ご興味のある方は是非ともTANADAピースギャラリーまでお越し下さい。
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山中コ～ジ
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